投資をしている商品を紹介していくシリーズの第一弾。メインで投資をしている通称「オルカン」ことeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の特徴を、ちょっとした豆知識を挟みながら紹介していきます。
Contents
三菱UFJフィナンシャルグループの子会社が提供
この商品は三菱UFJ国際投信株式会社が提供しています。三菱UFJ国際投信は、三菱UFJ銀行を中心とする金融グループ・三菱UFJフィナンシャルグループの信託銀行部門の子会社です。

eMAXIS Slimについて
eMAXIS Slimは、三菱UFJ国際投信が手掛ける業界最低水準の運用コストを目指し続けるノーロード(販売手数料が無料)のインデックス型投資信託シリーズです。投資家からの人気は高く、eMAXIS Slimシリーズの純資産総額合計は2021年4月に1兆円を突破しました。


業界最低水準の運用コストを目指していますので、eMAXIS Slimよりも低い信託報酬の投資信託が現れたときは、すかさず信託報酬を見直し、同等以下の水準まで引き下げてきました(信託報酬の推移については下図ご参照ください)。

三菱UFJ国際投信は「eMAXIS Slim」だけではなく「eMAXIS」というシリーズも提供しています。これは投資信託ではなくETF(上場投資信託)です。eMAXISシリーズも配当を行っていませんが、信託報酬はeMAXIS Slimシリーズよりも高いので、間違えてeMAXISシリーズを購入しないようにしましょう。

「eMAXIS」の「e」はインターネットを意味していて、「MAXIS」はMAX(最高の品質)とAXIS(投資家の投資中心軸)を掛け合わせた言葉なんだって。
インデックスファンドとは
日経平均株価やTOPIX、S&P500などの指数に連動する投資成果をめざすファンドのことです。逆に、このような指数を上回る投資成果を目指すファンドのことを「アクティブファンド」と言います。
アクティブファンドは、投資対象を見極めるために会社を調査・分析するので人件費が掛かり、また売買頻度も高いので取引手数料や税負担が発生し、期中の運用コストが高いという特徴があります。これに対し、インデックスファンドは機械的に投資可能なため人件費が小さくすみ、取引頻度も低いので低コストで運用が可能です。

インデックスファンドよりアクティブファンドの方が運用成績が良くなりそうな説明だけど、実際はインデックスファンドの方が成績が良いことが多いよ。運用期間が長ければ長いほどその特徴は顕著になるよ。
MSCI All Country World Index(MSCI ACWI)に連動
オルカンは、MSCI ACWIという全世界の株式市場に連動する投資成果を目指して運用がなされます。全世界株式に連動する指標は、MSCI ACWIの他にはFTSE GACIという指標があります。
2つの指標の違いについてはこちらの記事をご覧ください。
MSCIとは
この指標を提供しているのは、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(Morgan Stanley Capital International、「MSCI」)という会社です。MSCIは米ニューヨークに本社を構え、ニューヨーク証券取引所に上場している金融サービス会社です。
キャピタルグループの子会社・Capital Internationalが保有していた株式指数のライセンスをモルガン・スタンレーが買い取り、1998年にモルガン・スタンレーとキャピタルグループの合弁会社として設立されました。2007年にモルガン・スタンレーが保有する株式を売却し、MSCI Inc.として独立しています。
投資対象の国は先進国+新興国の計49ヶ国
MSCIが算出している主な指標には次のようなものがあります。
・ MSCI World Index:先進国23ヶ国を対象
・ MSCI Emerging Markets Index:新興国26ヶ国を対象
・ MSCI Frontier Markets Index:フロンティア国20ヶ国を対象
オルカンがベンチマークとしているMSCI All Country World Indexは、先進国(MSCI World Index)と新興国(MSCI Emerging Markets Index)の合計49ヶ国を対象とする指標です。


All Country World Indexという名前だけど、すべての国が含まれるわけじゃないんだね。
米国が約60%、他の国は数パーセント
オルカンの国別ポートフォリオは下図の通りです。一位は米国で58.3%。二位は日本で6.9%、三位は中国で5.2%です。投資対象は全世界ですが、米国の割合が大きく、米国の影響を受けやすくなっています。


ここだけの話、MSCI ACWIと米国を代表する指数S&P500の過去のパフォーマンスは大きく変わらないよ。
時価総額加重型
指数には、株価平均型と時価総額加重型の2種類があります。株価平均型は、構成銘柄の平均株価を表す指数で、単位は日本円や米ドルなどの通貨です。日経平均株価やダウ工業平均などが代表的な指数です。
時価総額加重型は、時価総額(株価×株式数)の合計を表す指数で、基準日の時価総額に対し、現在の時価総額がどれくらいかを表示します。単位は通貨ではなくポイントで、TOPIXやS&P500などが代表的な指数です。あまり馴染みがないかもしれませんが、世界的には時価総額加重型の指数の方が一般的です。
MSCI ACWIは時価総額加重型の指数です。一定の条件を満たした上場企業のうち、大型株(時価総額上位70%)・中型株(時価総額中位15%)の時価総額基づいて指数が算出されています。構成銘柄は、毎年5月と11月の年2回見直しが行われます。

時価総額加重型のインデックスファンドだと、構成銘柄の割合は時価総額に比例するよ。時価総額の大きい会社の株は多く、時価総額の小さい会社の株は少なくなるよ。
ファミリーファンド方式
集めたお金はマザーファンドと呼ばれる投資信託で運用されます。
オルカンでは、先進国株式、新興国株式、日本株式のそれぞれに連動するファンドに投資をしています。


複数のファンドをまとめることで効率的に運用を行うことができるよ。
運用成果はマザーファンドの運用実績の影響を受けるよ。
無配当型
投資信託は、投資家から集めたお金をまとめて運用し、運用して得られた収益を投資家に分配します。これを配当と言います。
オルカンの配当は年1回で、4月25日の決算時に分配金額が決定されます。
目論見書の分配方針には、"信託財産の成長を優先し、原則として分配を抑制する方針とします"と書かれていて、無配当であることを暗示しています。
実際に設定来分配は行われていません(といっても3期しかありません)。


配当が行われないことを残念に思うかもしれませんが、これは資産形成の観点からは非常に有利なことです。配当されると、それを受け取る時点で配当所得として所得税・復興特別所得税・住民税の合計20.315%が発生してしまいますので、その分再投資できる金額が減ってしまいます。
配当を行わなければこの税金は発生せず、本来配当に回す予定だった金額全額を再投資することができ、効率的に資産を増やせます。
※売却するときにまとめて課税されるので、税金コストを後ろ倒しにする(「繰り延べる」)効果があります。長期投資においてはこの税金負担のタイミングの差が大きな差に繋がります。

「配当を出しません」とそのまま書いちゃうと問題があるから曖昧な表現になっているんだって。
コスト
業界最低水準の運用コストを目指すと宣言しているeMAXIS Slim。実際に全世界株式に連動した運用を目指している他のインデックスファンドと期中の運用コスト比較してみました。
楽天証券の投信スーパーリサーチにて「インデックスのみ」「株式」「グローバル(日本含む)」という条件で検索し、全世界株式を対象とする投資信託のうち信託報酬が低い順に並び変えた上位4つを比較してみます。
なお、投資信託には、目論見書に記載されていないコストもありますので、運用報告書に記載されている1万口当たりの費用明細の比率(=実質コスト)も記載いたしました。
ファンド名 | ベンチマーク | 信託報酬 | 実質コスト | 純資産額 |
SBI・全世界株式インデックス・ファンド (愛称:雪だるま) | FTSE GACI | 0.1102% | 0.091% | 262億円 |
eMAXISSlim全世界株式(オール・カントリー) | MSCI ACWI | 0.1144% | 0.209% | 1,822億円 |
たわらノーロード 全世界株式 | MSCI ACWI | 0.1320% | 0.239% | 7億円 |
楽天・全世界株式インデックス・ファンド (通称:楽天VT) | FTSE GACI | 0.2120% | 0.181% | 1,019億円 |
結果としては、オルカンはMSCI ACWIに連動する投資信託の中では最安。ただし、同じく全世界株式を投資対象とするFSTE GACIに連動する投資信託には、オルカンよりも低コストのものがあります。
また、実際に調べてみてびっくりしたのは、”雪だるま”の実質コストの低さと、(ベンチマークは異なりますが)実質コストはオルカンよりも楽天VTの方が低いことです。

ぼくはつみたてNISAではオルカンを、iDeCoでは楽天VTを積み立てているよ。
購入手数料
投資信託の中には、商品を買う際に手数料がかかるものがあります。オルカンはかかりません。
信託財産留保額
売却する際に発生する手数料のことです。オルカンはかかりません。
純資産
2018年10月に設定されて以来、コロナショックによる株式下落(2020年3月)を除けば、右肩上がりに増加しています。2021年2月には1,000億円を突破、2021年6月には2,000億円を突破しました。
純資産が増加していれば途中で早期償還(ファンドが解散し返金される)の可能性は低くなり、長期投資をすることができます。ファンドを運用する期間のことを「信託期間」といいます。オルカンの信託期間は無期限です。
また、すべての費用が純資産規模に比例するわけではありませんので、純資産が大きければ大きいほど一口当たりのコストは下がります。
純資産規模、純資産の増減どちらを見てもオルカンは絶好調です。文句のつけようがありません。


長期投資をするならファンドの規模は最低でも20億円ないと心配、と言われているよ。ファンドを運用する期間
トラッキングエラー
連動を目指している指数との乖離をトラッキングエラーと言います。インデックスファンドではこのトラッキングエラーが小さければ小さいほど品質の高い商品になります。
オルカンのトラッキングエラー(直近1年)は5.39で、これは良い数字です。他の全世界株式に連動する投資信託ですと、雪だるまは直近1年/5.73、直近3年/5.14、楽天VTは直近1年/5.64、直近3年/5.17と遜色ない水準です。
ファンド名 | ベンチマーク | TE(1年) | TE(3年) |
eMAXISSlim全世界株式(オール・カントリー) | MSCI ACWI | 5.39 | - |
SBI・全世界株式インデックス・ファンド (愛称:雪だるま) | FTSE GACI | 5.73 | 5.14 |
楽天・全世界株式インデックス・ファンド (通称:楽天VT) | FTSE GACI | 5.64 | 5.17 |
まとめ
いかがでしたでしょうか。みなさんの運用商品選びの参考になれば幸いです。
これから第二弾、第三弾と紹介していきたいと思います。
オルカンの特徴
✅ 三菱UFG国際投信が提供
✅ 業界最低水準の運用コストを目指すeMAXIS Slimシリーズ
✅ 購入時・売却時も手数料なし
✅ 世界49ヶ国を対象とするMSCI ACWIをベンチマーク
✅ 無配当型(自動で配当を再投資)=税金の繰延効果
✅ 純資産は右肩上がりで2,000億円を突破
✅ トラッキングエラーは他のファンドと遜色なし