ここ数年で「SDGs」「ESG投資」といった言葉を頻繁に耳にするようになり、ビジネス現場にも急速に普及しています。今後ますますその重要度は増していきます。
今回は、この「SDGs」「ESG投資」について初心者向けに説明していきたいと思います。
SDGsとは
SDGsは、Sustainable Development Goalsの略で「持続可能な開発目標」と訳されています。2015年9月に国連に加盟する193カ国すべてが合意して採択した、持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標です。2030年を達成年限として17のゴールが定められています(その下に169のターゲットと232の指数)。
SDGsの前身は、2001年に国連で策定されたMDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)という発展途上国の開発目標です。SDGsとMDGsで大きく異なるのは、途上国の目標から先進国を含むすべての国が取り組む目標になった点にあります。

SDGs 17のゴール

日本政府の取組
日本政府は「SDGs実施指針」を策定し、日本の取組の現状分析に基づき、SDGsの17のゴールを日本の文脈に即して再構成した8つの優先課題と主要原則を提示している。また、このSDGs実施方針を基に全省庁による具体的な実施策を盛り込んだ「SDGsアクションプラン」を毎年策定し、国内における実施と国際協力の両面でSDGsの推進を目指している。
この他、SDGs達成に資する優れた取組を行う企業・団体を表彰する「ジャパンSDGsアワード」の設立(2017年)、優れたSDGsの取組を提案する都市・地域を選定する「SDGs未来都市」の設立(2018年)を行っている。

ESGとは


「ESG」とは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取ってつくられた言葉です。投資家や金融機関の投資判断を変えるために国連によって提唱されました。2006年、当時の国際事務総長コフィー・アナン氏が提唱した「PRI」(Principles for Responsible Investment、責任投資原則)の中で、投資の新たな観点として紹介されました。これを機に、投資の基準判断としてESGを考慮する投資家や、事業活動にESGを意識する企業が増えてきました。
PRIの6つの原則
(引用:国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI) 『責任投資原則』)
1.私たちは投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込みます。
2.私たちは活動的な所有者となり、所有方針と所有習慣にESG問題を組み入れます。
3.私たちは投資対象の企業に対してESG課題についての適切な開示を求めます。
4.私たちは資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるよう働きかけを行います。
5.私たちは本原則を実行する際の効果を高めるために協議します。
6.私たちは本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。
ESG投資とSDGsの関係
年金積立金管理運用独立行政法人のサイトに、とても分かりやすい図がありましたのでご紹介いたします。SDGsはあらゆる企業・団体が目指す目標、ESGはその目標達成のための活動・投資(=手段)と整理できます。

なぜこんなにESGが叫ばれているのか
ESG、SDGs(以下、まとめてESG)が重要視されている理由は、次の2つが考えられます。
① ESGを無視した活動は受け入れられなくなるから
1つ目はネガティブな理由です。ESGを無視して企業活動を行った場合、政府による規制導入、最終消費者の不買運動、投資家からの資金調達難、取引先との契約打ち切り等が発生した場合、企業の維持・継続が困難になります。リスクを低減させるために、ESGは欠かすことができません。
例えば、地球温暖化というテーマにおいては、二酸化炭素排出量を減らす目標に対して化石燃料の使用を減らす動きがあります。欧州を始め様々な国でガソリン車の販売が制限・禁止されることが決定しています。消費者も環境負荷にやさしい車を志向するようになるかもしれません。そうするとガソリン車は次第に市場から排除され、ガソリン車を作る会社、ガソリンを運搬・供給する会社、油田の権益を保有する会社は不要となり、従来のビジネスは成立しなくなります。
② 収益機会の獲得や、企業の安定的・長期的な成長に繋がるから
このような取組は、今までは単なる社会貢献として捉えられてきましたが、技術革新や社会的なESG意識の浸透により、新たな市場が創出・成長する可能性が高まっており、企業として中長期的に収益が期待できるようになりました。また、新しいビジネスを始めることで、企業の安定的・長期的な成長が期待できます。
終わりに
ESGの流れは間違いなく加速していきます。時代の流れに乗り遅れないよう、しっかりと勉強していきましょう。